レヴォーグ

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VR ターボ 4WD

    インペリアルレッド・メタリック/リバティホワイト 2トーン

2021.10.02

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(1)

今回は、タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VR ターボ 4WD を紹介。

 AX型アルシオーネ というと、割とどうでもいい話だが、知り合いの スバリスト の間でアルシオーネ の 1.8Lターボ4WD である AX7 の正式名称が一体何なのか、喧々諤々の議論になったことがある。

 つまり、

 @ アルシオーネ 4WD ターボ VR

 A アルシオーネ 4WD VR ターボ

 B アルシオーネ VR ターボ 4WD

 C アルシオーネ VR 4WD ターボ

 この中から正解は果たしてどれ?という訳だ。

 こういう問題は、大体、新車解説書、サービスマニュアル の冒頭に記してある 車名表 を見ることで「スバル がこう言ってんだからこれなんだよ」と一件落着する。はずなのだが、困ったことに、富士重工業 が発行していた年毎の新車解説書、サービスマニュアル でも、この車名に関する記述は曖昧で、4WD が先に来たり、VR が先に来たり、はたまた ターボ が先に来たりと一定していない。

 当時、「レオーネ4WD」といえば、ご存じ、1972年9月発売の本格的な生産ラインで生産されるクルマとしては世界初の乗用車ベースAWDとなった、A64 以来、スバルならではの 優れた機能性、合理性、そしてユニークさを示す、すでに世界的な主力商品だったし、それにターボ過給を加えた「レオーネ4WDターボ」といえば、ご存じ、1982年10月発売、世界初の4WDターボAT である AB5、AJ5 以来、多くの スバリスト の間で定着した呼称だった。

 ついでに言うと、1983年第31回サファリラリーで、高岡祥郎 / 砂原茂雄組 が、並みいるパワー差3倍に達するグループBカーを抑えて総合5位に輝いた、スバリスト にとってのスーパーカー、AB5型 "レオーネ4WDRX" は続き言葉であり、AA5型 は韻を踏んで "レオーネ4WDRXターボ" と呼ぶのが正しい。

 他のグレードのように "2ドアハードトップ" などという、いちいちボディ形状を示す 無粋 な言葉は要らない。"4WDRX" は "4WDRX" でしかあり得ない。それは "WRX" にしてもそうだし、2代続いた アルシオーネ にしてもまったく同じことだ。

 "レオーネRX" とは、スバリストにとって、あくまで FF の A22型A26型A33型 を指すものなのである。

 そう考えると@が正式名称だよ、と古くからの スバリスト が言えば「そうだねぇ」と思わず頷きそうになるのだが、そこに、AX型アルシオーネ オーナーが「AX型アルシオーネは泥臭い レオーネ のイメージを払拭するために生まれたんだから、そんな "4WD" が前に来るはずないじゃないか!」と横槍を入れてきてCを強く推されると、私を含む古くからの スバリスト は「老兵は消え去るのみってか!?」と少なからず抵抗を感じつつ、ポツダム宣言を受諾するべきか否か沈思黙考するのである。

 まあ、そんな訳で、AX型アルシオーネ オーナー の皆様におかれましては非常に不本意で、心中いかばかりかとお察し申し上げる次第ではございますが、Cをそのまま受け入れてしまっては、元来、天邪鬼である私の立つ瀬がないので、今回は、ひとまずBを正解とさせて頂きます。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD パッケージ

さて、この タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VR ターボ 4WD についてだが、1970年後半発売の 1/18 スバル R-2 SS から実に16年を経て、タミヤ がようやく送り出した 2台目 の スバル である 。

 1981年に発売された R30型 スカイライン をピークに少しづつ販売量が落ちてきていたのか、前輪ステアリングなし、モーターライズなし(後に完全な別シャシーでモーターライズ版を発売)で、バスタブ型インテリアの採用など全体的なパーツ数も絞り込み、かなりコストダウンと作りやすさに重点を置いたキット構成になっていて、それで発売当時の価格は 700円 と、以前のスポーツカーシリーズと同じことに少なからず落胆させられたことを鮮明に覚えている。

 だが、改めて今、組んでみると、OPだった 14インチアルミホール も入って、各部のディティールも タミヤ らしい細かさでしっかり再現されている上、空力を意識してボディ下がかなり入り込んだ形になっている特徴的なボディも、複雑なプレスラインやエアインテークまで一発でシャープに、しかも薄皮で抜いてくる、日本ならではの金型技術の粋を垣間見る素晴らしい出来映えで、2017年の再発売の際にも、ほぼすぐに完売御礼になってしまった、今なおモデラーの評価が高い伝説的な逸品である。

 再発もざっくり10年に一度という間隔でしっかり行われていて、前回の2017年の再発の際には、私も大人気なく30個まとめて "大人買い" して大切にストックしているし、今でも多少値は張るが、インターネットオークションでも入手しやすいので、まだ手にされていない方はぜひ手にして頂きたいお勧めの一台だ。

実車は、1985年5月に国内で発売されて、国内メディア向け試乗会は太っ腹にアメリカ・シカゴで行われる豪勢振りで、発売時には "Avant-garde in chicago" なるイメージブックまで配布されるという力の入れようだった。

 クルマとしての成り立ちは、ホイールベースは AA型レオーネ と全く同じで、OHC化された 水平対向4気筒 EA82型ターボエンジン を搭載。発売当初の A型 では 、4WD VR では、新設計の 5速マニュアルトランスミッション と 3速AT が選択できたのだが、FF VS は、なんと 5速マニュアル のみという硬派な設定だった。

 FF VS の 3速AT車 も、1986年6月、サンルーフ車が追加された B型への移行の際に遅ればせながら追加されている。

 AX型 アルシオーネ の特徴といえば、なんといっても ウェッジシェイプ を突き抜けた ウェッジ そのもの の斬新なスタイリングだ。2 + 2 のスペシャリティカーというパッケージだからこそ可能になった、前後ウインドウの同傾斜角、スバル としては空前絶後の リトラクタブルヘッドライト を採用してエンジンの補器類配置を見直してまで低いフロントノーズにこだわり、後輪ドライブトレインを持たない FF VS では Cd値 0.29 を達成。

 それは、従来、スバルが謳ってきた スペースユーティリティ や メカニズムの機能性や合理性 といった価値を越えた"豊かさ" を訴求している点で、スバリスト として "新しさ" を感じた。

 凝ったリンク機構を持った1本アームのフロントワイパーを採用したことも新しかったし、4WDターボの VR では、レオーネ4WDターボGT と同じく、空気ばねを採用した EP-S(エレクトロニューマチックサスペンション)とワイパー、ブレーキなどを作動させると自動的にAWDに切り替わる "AUTO 4WD" が搭載されたことも、当時の スバル のフラッグシップに相応しい内容だった。

 1987年7月 には、ER27型 2.7L水平対向6気筒エンジン + アクティブトルクスプリット4WD(ACT-4)を搭載した 2.7 VX を新たなフラッグシップとして設定。スバル初の ABSや "CYBRID" なる、従来のクランクプーリーからVベルトでオイル式パワーステアリングポンプを駆動する方式に替えて、電動モーターでオイルポンプを駆動させるパワーステアリングを採用したことは驚きだったし、 1.8Lモデルも、VR の 5速マニュアル車 が レオーネRX-II に準じた、ベベルギヤ式センターデフにアクチュエーターにより作動させるデフロック機構を備えたフルタイムAWDとなり、VR AT車に オールレンジ電子制御4速オートマチック「E-4AT」を搭載。特に、MP-T(マルチプレート・トランスファー)に代えて、ACT-4 が VR AT にまで拡大採用されたことは、目立たないが、いかにも 富士重工業 らしい良心を感じさせるトピックだった。

 惜しむらくは、国内発売直後の 1985年9月、アメリカ・ニューヨークのプラザホテルで行われた先進国首脳会議(G5)で、日米貿易不均衡の是正のために、円高ドル安を容認する、いわゆる "プラザ合意" によって、アメリカ市場における競争力を急激に失わざる得なくなってしまったことだけが スバリスト としてはあまりにも無念だった。

 ただ 富士重工業 はこの教訓から、いすゞとの合弁で 1990年 に稼働を開始した、インディアナ州の スバル・いすゞオートモーティブ(SIA)というアメリカにおける生産拠点を設け、それが現在の スバル の隆盛を支えていると考えれば、決して悪いことばかりではなかった。

 何より、スバル の歴史を振り返る時、専用の パーソナルクーペ ボディを持つモデルは、AX型アルシオーネCX型アルシオーネSVX のみで、その存在は未来永劫、まさに プレアデス星団の1番星 として永遠に眩い光を放ちながら輝き続けるのだ。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(3)

ところで、この AX型 アルシオーネ 前期型にはどういうボディカラーがあったのだろうか。

 1985年5月 国内発売時の A型 に展開されたボディカラーは次の通りである。

 @ インペリアルレッド・メタリック / リバティホワイト 2トーン
 A ライトニングシルバー・メタリック / フォーミュラブラック 2トーン
 B スペースブルー・メタリック / リバティホワイト 2トーン
 C マリーナブルー・メタリック / リバティホワイト 2トーン
 D リバティホワイト / ガルグレイ 2トーン

 ちなみに、日本国内向けより少し早く、1985年年初からデリバリーが始まっていたアメリカ向けには こちら のカラーバリエーションが展開されていた。

 面白いのは、ライトニングシルバー・メタリック と組み合わされるブラックが、国内向けには "フォーミュラブラック" となっているのに対して、アメリカ向け AB型レオーネ 登場2年目の 1981年モデル から展開されていた "エクストラブラック" となっている点。作っている工場は同じで、後述するが、当時、国内向け AA型レオーネ に ブラック は展開されていなかったから、色番などは未確認だが、何らかの事情から国内向けとアメリカ向けで色呼称を変えたものと思われる。

 また、同じ ブルーメタリック で、ビビッドな色味の スペースブルー・メタリック と パステル系の薄い マリーナブルー・メタリック がそれぞれ リバティホワイト との組み合わせで用意されたことも興味深い。

 スバル は AA型レオーネ まで、国内向けに ブラック の ボディカラー を展開したことがなかった。例外は、1967年5月、登場1年目で初めてのマイナーチェンジを迎え、型式が A522型(2ドアセダンは A512型)から A12型 に変更となった スバル1000 で、4ドアセダンスーパーデラックス で ローマンブラック という ソリッド の ブラック が設定されたのが唯一の例だった。

 この ローマンブラック は、翌1968年11月、スバル1000 2ドアバン が追加され、シリーズのカタログが刷新されたタイミングでカタログ落ちしていて、熱狂的なスバル1000マニア を自負する私でも、この ローマンブラック だけはお目に掛かったことがない。

 スバル の ブラック といえば、BC/BF型レガシィ からは少しづつ色味を変えながら BE/BH型レガシィC型 まで ブラックマイカ(AX9 アルシオーネ 2.7 VX にも D型から展開)、BE/BH型レガシィD型 からは ブラックトパーズ・マイカ、BL/BP型レガシィ からは オブシディアンブラック・パール、BM/BR型レガシィ からは クリスタルブラック・シリカ が設定され現在に至る訳だが、件の スバル1000 の ローマンブラック と、アメリカ市場で 1981年モデル から エクストラブラック が展開されたことは例外としても、やはり ブラック は夜間などの外部からの視認性で一番劣ることは否定できない事実で、スバリスト としては、こうしたところにも スバル が 1977年 から提唱している "0次安全" に通じる思想の底流を垣間見る想いがするのである。

 AX型 アルシオーネ A型 のボディカラーの話に戻るが、アメリカ向け1985年モデルでは、国内向けには展開されなかった シャドウグレイ・メタリック/ライトニングシルバー・メタリック 2トーン、国内向けには AA型レオーネ で展開されたソリッドのレッド、フレアレッド/リバティホワイト 2トーン、バンパーが ポリプロピレン の成型色素地となる最廉価グレード GL に スペースブルー・メタリック単色 が展開されていたことが興味深い。

 ちなみに、AA型レオーネ から登場した インペリアルレッド・メタリック は、シリーズの上位モデルだった 1.8L 車に、フレアレッド が 1.6L車 に、という、少なくとも国内向けには明確な "棲み分け" があったから、アメリカ向け XT にそれぞれ リバティホワイト との組み合わせの 2トーン が用意された事は面白いし、並べてみると一体どういう色味や味わいの違いがあるのか興味をそそられる。

 1986年6月、サンルーフ車が追加された AX型アルシオーネ B型 では、早くも インペリアルレッド・メタリック 2トーン がカタログ落ち。代わって 1985年11月に追加された AG型レオーネ 3ドアクーペ のカタログイメージカラーとなった ルーセントグレイ・メタリック / ライトニングシルバー・メタリック 2トーン が登場。

 一足早く発売されたアメリカ向け1986年モデルは、生憎、私が アメリカ向け1986年モデル の本カタログを持っていないので未確認だが、サブカタログ を見る限り、アメリカでも発売となった レオーネ3ドアクーペ に マイカレッド が新設定され、1987年モデル でも、国内向け AA型レオーネ C型 で、RX-II の 5速マニュアルベベルギヤ式フルタイムAWDシステムを移植した GT-II のカタログイメージカラー、ムーンシルバー・メタリック との 2トーン が設定されているので、アメリカ向けも インペリアルレッド・メタリック は マイカレッド に置き換えられた可能性が高い。

 ということは、インペリアルレッド・メタリック は、日米ともに展開された期間が1年余りという稀少色で、AA型レオーネ 登場1年で ルーセントグレイ・メタリック に置き換えられた シャドウグレイ・メタリック は、無論、国内向け AX型 アルシオーネ には展開されていないから、世界的にさらに貴重な存在であるということになる。

 また、マリーナブルー・メタリック 2トーン の下部色が、リバティホワイト から ルーセントグレイ・メタリック に置き換えられ、最廉価の GL も スペースブルー・メタリック単色 から ルーセントグレイ・メタリック単色 のみの設定となっている点も見逃せない。

 1987年モデルからは、国内向けとアメリカ向けモデルのカラーバリエーションの棲み分けが顕著になっていくので、2.7 VX 登場後の 国内向け C型、アメリカ向け1988年モデル以降のカラーバリエーションやディティールの変遷を追うのも面白いだろう。

 AX型 アルシオーネ のモデリングもなかなか奥が深い。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(4)

2017年の再発の際でも、金型は非常に良好な状態に保たれていたので、平面も平滑で気になる金型のパーティングライン部での造形のズレや引けなどもほとんどなく、一通りのパーティングライン削除作業を行えば、その他、特に修正を行わなくても安心して塗装作業に移ることができる。

 ただ、リトラクタブルヘッドライトカバー上面とエンジンフードのチリ合わせの詰めがやや甘いので、できれば左右ヘッドライドを繋ぐリンケージは作り直すべきだし、そのリンケージを押さえるヒンジが緩く、ヘッドライトを上げた状態が維持しづらいので、リンケージとヒンジの寸法を少し詰めてやれば完成後の満足度も高くなる。

ヘッドライトレンズとリヤガーニッシュはクリヤーパーツが用意されているが、ボディ一体成型のフロントのポジション / ターニングフラッシャーランプASSY と リヤバンパー の一対の バックアップランプ もできれば削除して、クリヤーパーツを新製してリアリティを高めたい。

 AX7 の見せ場は、なんといっても、上下でシャープに塗り分けられた 2トーンカラー だから、しっかりとメインカラーを調合して下塗りをしたら、全神経を集中してカッチリとマスキングを行って下部色とキャビンのグリーンハウスのヒドゥンピラーをそれぞれ塗り分けることが仕上がりの重要なポイントになってくる。

 各部のカラーの取り合い部分を カタログ を参考にしっかりチェックして、慎重に作業を進めて頂きたい。

 今回は前後の六連星オーナメントは、ボディモールドに色を乗せる仕上げとしたが、フロントのオーナメントはなかなかモールドはシャープなのだが、リヤの方は今一つモールドが浅く甘いので、できれば前後ともメッキデカールで作り直すことでリアリティを上げたい。

 また、リヤバンパーのナンバープレート部はセミグロスブラックアウト塗装仕上げで2トーンカラーの塗り分けとの取り合いを引き締めるディティールだけに、2トーンカラーとグリーンハウスのヒドゥンピラーをしっかり塗り分けることができても決して気を緩めることなく、しっかりとマスキングを行ってフロントアンダースポイラー、フロントバンパー上面、サイドシル下面とエアフラップともどもきっちり塗り分けて欲しい。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(5)
タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(6)

で、フロントフェンダー前端のサイドフラッシャーランプASSY もボディ一体モールドとなっているので、リアリティを追求するなら、できれば削除の上、新たにクリヤーパーツを新製したい。

 ところで、このサイドフラッシャーランプは、国内向けアルシオーネと海外向け XT では形状が違う。国内向けアルシオーネ用は、発光部に突起を設けて前方からでもウインカーの作動を外部から確認しやすくしているのに対し、海外向け XT には、この突起はないのだ。

だから、このキットで XT を製作する場合は、厳密にいえば、この突起を削除しなければ 不正解 なのである。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(7)

シャシーである。

 今回はいつも通りリアリティを追求することはもちろんだが、一方でとても久しぶりにこのキットを製作するので、素組みでどの程度のフィニッシュまで辿り着けるのかという点にも非常に興味があった。

 AA型 レオーネ 時代の スバル のシャシーのラインオフ状態での仕上げは、ホイールハウス内は薄くシャシーブラックが吹き付けられていて、ウレタンのプチプチのアンダーコートの上に乗っていたボディカラーは、シャシー裏では結構ムラがあって、ところどころホイールハウス内に吹き付けられたシャシーブラックがあちこちに飛散して黒ずんでいて、お世辞にも見た目が良いとはいえなかった記憶がある。

 この時期の生産工程風景をまとめた冊子が、当時、富士重工業 の工場見学に訪れた人たちに配布されていた "自動車のできるまで 〜How Subarus car made〜" で、興味がある方にはぜひお読み頂きたいと思うのだが、ずっと スバル を見続けてきたひとりの スバリスト として、AA型レオーネ からようやくカチオン電着塗装が導入されて、贔屓目は抜きにして2ランク程度、飛躍的に防錆性能が向上している。

 スバル では、そもそも スバル1000 ですでに電着塗装を採用していて、もちろん AB型レオーネ でもそれは使われてはいたのだが、塗料を乗せるボディ側の鋼板の洗浄が不確実だったりすると、プール内で ボディ側、塗料側にそれぞれ+と-イオンを帯電させる電着塗装でも、うまく塗料が乗らない部分が発生してしまい、どうしてもその部分の塗装が浮いてしまうことで経年とともに錆が発生してしまう難点があった。

 AWD車である関係上、一般的な乗用車より過酷な条件で使用されるケースは多かったから、スバル にとって防錆性能の向上はユーザーの満足度を上げていく上で非常に大きな意味があったのだ。

 フロントが、I型トランスバースリンクにリーディングロッドという構成のストラット、リヤが AB型レオーネ から再び両側のセミトレーリングアームがひとつのクロスメンバーに統合されたサスペンションは、一見、A型レオーネ からあまり変わり映えしないように感じるかもしれないが、AA型レオーネ からはリヤサスペンションのスプリングが、トーションバーからホイールハウス内のショックアブソーバーとの一体式のコイルスプリングに変更されている。

 私は AA5型 レオーネ4WDRXターボ でコンペティションの世界に足を踏み込んだのだが、確かにトーションバーに比べればコイルスプリングの方がセッティングは出し易かった筈なのに、なにしろ AA型レオーネ用 の リヤコイルスプリング なんてアフターマーケットではほとんど売っていなかったから、結局、リヤサスのセッティングでプライベーターとしてやれることは、せいぜいスタビライザーを交換する程度で嵩が知れていたし、サファリラリーを戦い抜いたスバルのワークスレオーネでも、大きなギャップを超えた際や荒れた路面をハイアベレージで駆け抜ける際のリヤの安定性は AB5 でも AA5 でも大して変わらなかったという当時の関係者やドライバーの証言もある。

 結局、リヤのスタビリティを向上させる上で一番重要なのは、サスペンションの絶対的なストローク量とタイヤを素早く路面に追従させるバネ下重量の軽さだったということだ。

 だから、次世代となる BC/BF型レガシィ で、フロントストラットをがっちりとしたL型ロアアームで、リヤの前後方向をトランスバースリンクで、横方向をスパンの長いラテラルリンク4本で支持する方式へ抜本的に見直されたことは、実に 富士重工業 らしい、良心と経験に培われた "合理的必然"だったのだ。

 ぜひ ハセガワ 1/24 レガシィRS と見比べて頂きたい。現在の SGP(スバル グローバル プラットフォーム) に続く スバル のシャシーの進化を感じて頂けるはずだ。

 つまり、狂信的なスバリスト である私が何も考えなくてもこんなストーリーがつらつらと書き連ねられるほど、このタミヤ の アルシオーネ のシャシーは素晴らしい完成度なのである。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(8)

前述の通り、今回は左右リトラクタブルヘッドライトを繋ぐリンケージを作り直しているので、ヘッドライトもここまできちんと開くのだが、キットオリジナルのままではヘッドライトユニットがこれより沈み込んで、かなり眠たい表情になってしまう。

 折角、開閉できるのだから、ここは スバリスト としてはしっかりと詰めておきたいポイントだ。ついでにそのリンケージを支えるヒンジの精度を高めて、ヘッドライド開状態をしっかり保持できるように加工することもお忘れなく。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(9)

さて、室内に移ろう。

 インストルメントパネルはこの様にリアリティたっぷりに、実車を忠実に再現している。

 室内色は、インペリアルレッド、リバティホワイトがブラウン、ライトニングシルバー、スペースブルー、マリーナブルーがブルーだ。

 今回はあえて修正していないが、インストルメントパネルと左右ドアのアームレストとの繋がりがやや悪いので、このあたりは修正した上でドアオープナーノブとパワーウインドウスイッチを追加すればなお良いだろう。

 グローブボックス部はドアトリムと同じ布地張り、またベンチレーショングリル、トリップコンピューター、カセットステレオユニット、ラジオユニットとメータナセル部は、似たような色味だが、光沢、表面仕上げなどの質感の異なるプラスチックで構成されているので、液晶部とともにしっかりとマスキングして塗り分けたい。

 ステアリング両側に伸びるコントロールウイングも、インストルメントパネル上面ウレタン部と同様、シボ入りの室内色のプラスチックと黒のクラスタースイッチ部のプラスチックでは質感はまったく異なる。またフロアコンソールも、ドアトリムと同じ布地が複雑に貼り込まれているので、しっかりとマスキングを行い、質感にも配慮しつつ慎重に塗り分けてもらいたい。

 ちなみにメーター部は、AX型 アルシオーネ の象徴ともいえる エレクトロニックインストルメントパネル と アナログメーター の実車を忠実に再現したデカールの選択式だ。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(10)

フロントシート2脚は、背面部の肉抜きをポリエステルパテで修正して塗装の上、センター部生地のパターンがデカールで付属しているので、しっかり空気を抜いて密着させて乾燥。UVカットつや消しクリヤーにわずかに粗目フラットベースを調合して仕上げている。

 A型 では、リヤシートはビニールレザー張りなので塗装仕上げでOKだが、B型 では、リヤシートもフロントシートと同様のパターンの入った布地張りとなるので、例えば、B型 のサンルーフ仕様を製作する場合はパターンを用意しなければならない。

 それから、実車のグリーンハウスのウインドウについてはブラックアウト部分がある。前後ウィンドウはグラスモールから約1oブラックアウトすれば良いし、ドアグラスはサッシュレスだからブラックアウトする必要はないのだが、Bピラーおよびクオーターウインドウのブラックアウト部はやや面倒かもしれない。

 ここは、完成後もかなりリアリティを左右する重要なポイントなだけに、当時のカタログカットを参考にマスキングを作成してきちんと塗り分けて頂きたい。

 そこまでこだわることができるかできないか。

 そこがあなたの AX型 アルシオーネ への "愛" を測るバロメーターといえるだろう。

タミヤ 1/24 スバル アルシオーネ VRターボ 4WD(11)

AX型 アルシオーネ には、2.7 VX もあるし、後期型1.8L車 も細部の意匠や仕上げは結構変更されている。さらに 1985年 第26回東京モーターショー に参考出品された、2.7VX のプロトタイプである ACX-II、1987年 第27回東京モーターショー に参考出品された "ALCYONE JUNKO KOSHINO" と、フルカーボンのオープンボディという "ALCYONE FICCE SPECIAL" 、国内発売直後の 1985年8月、もはや当時を知るスバリストの間で "伝説" となっている、オーストラリアで行われた ウインズサファリラリー参戦車両 もある。

 モデリングのお題には事欠かないだけに、スバリスト ならずとも、ぜひ一度手掛けて頂きたいと思う。


ミニチュアカーTOPへ

スバル中古車検索サイト SUGDAS